教師の経験がある壮年部のリーダーの話だ。高校の教室で、授業

を始めようとすると、一人の生徒がロッカーの上で寝ていた。番長格

の彼に「何しているんだ!」。感情がぶつかり、口論になった▼この

時のことを、自戒を込めて振り返る。あれが番長でなく、生徒会長

だったら、「どうかしたのか?」と聞いただろう。番長にも「どうかしたの

か?」と聞くべきだった、と▼卓越した教育者であった牧口初代会

長は、「認識せずして評価するなかれ」と、常に戒められた。「何し

ているんだ!」は評価であり、「どうかしたのか?」は認識に通じると

いえようか▼あの人はこういう人だから、多分こうなのだろう−−。固

定した先入観で、その人の状況を判断してしまうことがある。人をど

う見るか。そこに見る側の姿勢がある。正当に見ようとする努力があ

るかどうか。突き詰めれば、人間をどうとらえるかという、人間観の問

題になる▼「私は、一度会った人は、最後まで励まします。その人

が、千里の果てに行こうとも、信心を少々休んでいようと、どんなこと

があっても守ってあげたい」(法華経の智慧)。この一言に、人間

への全幅の信頼を置く名誉会長の人間観がにじみ出ている▼深い

信頼感。相手を理解しようとする思い。人に向き合う時、この姿勢

に立ちたい。私はあなたを信頼します−−そう心で言い切れる生命

力と慈悲を涌き起こし、今日も対話を。(弓)


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